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開催趣旨

 ICTを活用し地域社会の「人のつながり」を作り強化することで地域社会の活性化を目指す「地域SNS」の取り組みは、熊本県八代市での誕生から5年が過ぎ、全国約400ヶ所にまで増加しています。地域SNS全国フォーラムは、地域SNSの運営や参加、研究などに関心をもつ人々が全国から集まり、情報交換や交流をするイベントとして、平成19年8月から年2回のペースで開催してきました。

 今回のフォーラムは、地域SNSの誕生から5年という契機にあたり、またますます地域社会の「人のつながり」の再構築が求められる中での開催となります。ICTが得意とするところではその特性を活かし、不得意なところでは他の手段と組み合わせながら、地域コミュニティの活性化や地域メディアの創出等の目的をいかに実現するか。全国各地からの参加者とともに地域SNSの有効な活用法や今後の発展の方向などについて議論するとともに、広く世の中に地域SNSをアピールする機会として、「第6回地域SNS全国フォーラムin千葉」を開催します。

テーマは「まちの「こんにちは」を目指して」です。

プログラム

時間 内容・登壇者
10:00~10:20
開会式
歓迎の歌  松尾貴臣氏 (㈱こころざし音楽工房 代表取締役)
あいさつ  後閑博史氏 (財団法人NEC C&C財団 専務理事)
あいさつ  熊谷俊人氏 (千葉市 市長)
あいさつ  齋藤 康氏 (千葉大学 学長)
10:20~11:20
講演
まちの「こんにちは」を目指して -あみっぴぃ誕生まで
虎岩雅明氏 (NPO法人TRYWARP/あみっぴぃ)
11:20~11:50
講演
地域SNSの現状と発展の方向性
庄司昌彦氏 (国際大学GLOCOM /地域SNS研究会)
11:50~13:20 昼食休憩
13:20~14:50
分科会
分科会1-1
「地域通貨と地域SNSから広がった新たなつながり -西千葉の事例から」
(けやき会館)

松尾圭氏(千葉大学大学院)
堂本暁子氏(前千葉県知事)
松山美穂子氏 (mihorin企画)
岡田泰子氏(NPO法人子ども劇場千葉県センター)
アライヒロユキ氏
虎岩雅明氏

※特別講演:
「実名登録による人的ネットワークの構築に向けて -千葉大学校友会SNS「Curio」の取組み- 」


大塚成男氏(千葉大学)

分科会1-2「地域SNS研究の最前線」(203教室)

鳥海不二夫氏 (名古屋大学)
峰滝和典氏(関西大学)
和崎 宏氏(兵庫県立大学/ひょこむ)
原田 泉氏(国際社会経済研究所)
14:50~15:05 休憩
15:05~16:35
分科会
分科会2-1
「地域SNSの事業継承を考える -横浜市から民間への引継ぎ事例から」
(けやき会館)

杉浦裕樹氏(横浜コミュニティデザインラボ)
宮島真希子氏(神奈川新聞)
肥田野正輝氏(インフォ・ラウンジLLC)
和崎宏氏(兵庫県立大学/ひょこむ)
坪田知己氏(慶應義塾大学大学院教授/前・日経メディアラボ所長)

分科会2-2
「地域における新しいツールとビジネスの関係-Twitter、動画中継などをどう使うか」
(203教室)

手嶋 守氏(手嶋屋 代表取締役)
牛島清豪氏(佐賀新聞社 デジタル戦略チーム)
細谷拓真氏(秋田県横手市Yokotter 代表)
庄司昌彦氏(国際大学GLOCOM)
16:35~16:50 休憩
16:50~17:50
メインセッション
「地域を元気にするICTの使い方」(けやき会館)

谷脇康彦氏 (総務省 情報通信国際戦略局情報通信政策課長)
藤倉潤一郎氏(地域協働推進機構)
小路隆行氏 (神奈川県厚木市 情報政策課)
庄司昌彦氏 (国際大学GLOCOM)
17:50~18:00
閉会式
あいさつ 海保眞氏
(地域通貨ピーナッツクラブ西千葉世話役/ (有)アミーゴジャパン代表取締役)


シンポジウム概要

会場: 千葉大学けやき会館
千葉市稲毛区弥生1-33 千葉大学西千葉キャンパス構内
主催: 第6回地域SNS全国フォーラムin千葉実行委員会
共催: 財団法人 NEC C&C財団
後援: 総務省 千葉市 千葉大学
協力:
有限会社アミーゴジャパン健康空間ひらやま整体院
ぎやまん亭八街落花生組合フクヤ商店
壁の穴キッチン円
ムーンライトブックストアタイ料理ラビアン・タイ
ピーナッツクラブ西千葉BILLIE'S BAR
NPO法人TRYWARP居酒屋「あっぱれ」
甘味処 楓株式会社トライワープソリューションズ
合同会社むすび家陽菜(ひな)
株式会社かっぺCafe Mosh
株式会社こころざし音楽工房Bar&Grillじゃむ
mihorin企画八街市推奨の店 ぼっち
さろん花園日蓮宗 経王山 本昌寺
woodhouse-cafe株式会社桃太郎不動産
RYOMA online呼吸
千葉大学公認サークル CUPONPO法人 子ども劇場千葉県センター
北京亭株式会社プロシードジャパン
株式会社まちづくり商会NPO法人千葉まちづくりサポートセンター
JIRO&アトリエ5

公式サイト・コミュニティ・ネット中継

・第6回地域SNS全国フォーラムin千葉 公式サイト(動画中継)
 http://forum.local-socio.net/live

・公式コミュニティ(地域SNS「あみっぴぃ」内)
 http://amippy.jp/?m=pc&a=page_c_home&target_c_commu_id=1411

・Twitter
 公式アカウント:@snschiba
 公式ハッシュタグ: #snschiba

関連イベント

パネル・ポスター展示
懇親会&大アピール大会
山武分科会
アンケート集計結果

山武分科会

日時:2月19日(金)午後13時~17時

会場:千葉県山武市役所

プログラム:
13:05オープニングメッセージ(牧慎太郎さん:中継)
13:10~14:40「しなやかなつながりの創造-人にやさしい地域SNSとは」
15:00~16:15「つながりの覚醒-街を元気にする地域SNSを目指して」
16:45~16:50第6回・第7回地域SNS全国フォーラムPR

藤井洋子福井県坂井市 福井大学地域経済研究所客員研究員
岡本早苗広島県尾道市 おのみっち管理人
小島妃佐子千葉県山武市 NPO法人山武IT推進協会理事
大槻大輔千葉県山武市副市長
庄司昌彦国際大学GLOCOM主任研究員
虎岩雅明NPO法人TRYWARP代表理事
宮島真希子神奈川県横浜市 神奈川新聞社デジタルメディア局
早瀬公夫静岡県地域情報化コーディネータ, 掛川市情報政策コーディネータ,
和崎宏インフォミーム 兵庫県立大学大学 総務省地域情報化アドバイザー

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懇親会&大アピール大会

日時:2月20日(土)18時30分~20時30分

会場:千葉大学学生食堂


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 参加申込時に行ったアンケート「最もよく使っている地域SNSは?」という問いに関する集計結果である。174名が申込みを行い,合計181の回答を得られた。(複数回答をそれぞれカウント)うち123人が最もよく使っている地域SNSを回答し、計39の地域SNSが挙げられた。今回のフォーラムの開催地が西千葉ということもあり、西千葉の「あみっぴぃ」が最多であった。続いて東京都葛飾区の「かちねっと」,神奈川県横浜市の「ハマっち!」,兵庫県の「ひょこむ」が並んだ。

 
あみっぴぃ47
かちねっと11
ハマっち!10
ひょこむ9
e-じゃん掛川3
Mixi3
あんみつ3
おおさか本音っと3
下北沢ブロイラーSNS3
Curio2
Lococom2
NikiNiki2
つつじネット2
ひびの2
ラブマツ2
雪国観光圏2
地域SNS研究会SNS2
-とちぎどっとこむ1
Fレックス1
twitter1
VARRY1
Web.CoM.1
あつぎ地域SNS1
うるおい新潟SNS1
オタクール1
おのみっち1
お茶っ人1
コミュニティ高知SNS1
じゃんだらリング1
すもーるすてっぷnextstep1
ドコイコ1
クスタ1
みんなの船橋1
下町めぐり.jp1
市川市1
精神障害者の地域生活推進ネットワーク・ちば1
柏SNS1
房州わんだぁらんど1
なし51
合計回答数181
(複数回答も個別に計算)

パネル・ポスター展示

 けやき会館2階ホール・会議室では、各地の地域SNSがパネル・ポスター展示や資料の配布を行った。運営者と参加者が直接コミュニケーションをする企画も行った。

参加団体:

・あみっぴぃ(西千葉)
・ラブマツ(千葉・松戸)
・下北沢ブロイラーSNS(東京・下北沢)
・e-じゃん掛川(静岡・掛川)
・かちねっと(東京・葛飾)
・地域SNS研究会(国際大学GLOCOM)
・マイタウンクラブ あつぎ地域SNS(神奈川・厚木)
・つつじネット(福岡・久留米)
・世界の千葉(千葉)
・みんなの船橋(千葉・船橋)

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閉会式

 第6回の開催地西千葉から、次回第7回の開催地、静岡県掛川市への「地域SNS全国フォーラムの旗」のリレーが行われた。

挨拶:海保眞氏
(地域通貨「ピーナッツクラブ西千葉」世話役/(有)アミーゴジャパン代表取締役)

 海保氏は、地域活性化における対面でのコミュニケーションの大切さを強調した。特に、互いに顔を合わせ、目を見て挨拶をすることが大切であると説いた。そして、西千葉で流通している地域通貨「ピーナッツ」では通貨を使用した際に「アミーゴ」という合言葉を唱えながら握手をするという取組みを紹介し、最後には会場の参加者全員で握手を交わし記念撮影を行って終了した。参加人数は計240名であった(内スタッフ53名)。

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[パネリスト]

谷脇康彦氏(総務省 情報通信国際戦略局情報通信政策課長)
藤倉潤一郎氏(地域協働推進機構 代表/地域協働ポータルサイト)
小路隆行氏(神奈川県厚木市 情報政策課)

[司会]

庄司昌彦氏(国際大学GLOCOM 主任研究員/地域SNS研究会)


 このセッションでは、「地域社会を元気にする」等の目的に対して、地域SNSなどのICT(情報通信技術)が得意なところはそれを最大限活用し、苦手なところは別なもので補うなどしてうまく活用していこうという考え方に立ち、具体的な取り組みと俯瞰した視点の双方による視点から意見が交わされた。

 初めに司会の庄司氏は、地域SNSの目的はSNSの活性化ではなく、あくまでも「地域の活性化」にあるとし、地域を元気にするICT利用を考えていきたいと述べた。

 続いて総務省の情報通信国際戦略局情報通信政策課長である谷脇氏より、日本のブロードバンド利用について説明がされた。それによると、今日情報設備が整い始めているにも関わらず、その利活用の面では遅れているという現状が示された。また政府も地域主権のあり方を模索しており、情報通信技術の活用性が期待され、ICTを利用した人と人とのネットワークを目標にするべきであることが述べられた。

 このセッションでは地域でICTが活用されている具体的な取り組みとして、マイタウンクラブと地域協働ポータルサイトについて紹介があった。

 まず神奈川県厚木市の情報政策課である小路氏から、マイタウンクラブについて、その設立の歴史と現在の状況について説明があった。そこではマイタウンクラブで行われているサービスや、高齢者やPCが苦手な人をサポートするマイタウンサポーターズクラブの取り組みが紹介され、小冊子等を通してSNSの利用価値について理解してもらい、ゆっくりだが着実にコミュニティが広がっている様子が述べられた。

 次に地域協働推進機構の代表で地域協働ポータルサイトを運営している藤倉氏より、ポータルサイトの説明と運営状況について紹介があった。氏はまず地域SNSを作ろうとしたのが最初ではなく、街づくりの基盤を作りたいという願望が最初にあったことを述べた。そのために行政、企業、NPOが連携した形を理想とし、地域協働のプラットホームの環境作りとしてポータルサイト設立の目的があることを説明した。地域協働ポータルサイトの特徴としては、コミュニケーション型よりもテーマ型に絞っていることや、交通系ICカードとの連携、寄付に応じた「まちづくりポイント」の寄付、施設予約公共サービスとの連携などが挙げられ、地域活動に関わった内容は可視化できるようにして、利用者の立ち位置を明確にしていることが述べられた。

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 谷脇氏は、これらの取り組みに対しリアルの関係に繋がっているところが重要であることを述べ、リアルの繋がり力をつなげている所が面白いとした。またこのような取り組みには行政とNPOの連携が大事であり、これからもその連携について試行錯誤したいとの感想が述べられた。

 この後、パネリストの間で質疑が交わされた。谷垣氏の携帯電話との関連についての質問に対して、小路氏はほとんどのサービスが携帯と連動しているが、高齢者が多く、その利用が進んでいない現状を明らかにした。また司会の庄司氏から、サービスがシニアを意識しすぎているのではないかとの質問があった。これについて小路氏は、行政サービスは様々な年齢層を対象としており、ネット利用を後押しするために高齢者に対応しているのであり、若者も積極的にマイタウンクラブを利用している例を挙げた。寄付を引き出すコツについての質問に関して、藤倉氏は非常に難しいが、地域の現状や問題を知ってもらうことで寄付を募ることが大切であり、寄付を「社会的投資」という認識に変える働きが大事であることを述べた。 最後にパネリストからそれぞれセッションの感想が述べられた。

[パネリスト]

手嶋守氏(手嶋屋 代表取締役)
牛島清豪氏(佐賀新聞社 デジタル戦略チーム)
細谷拓真氏(Yokotter 代表)

[コーディネーター]

庄司昌彦氏(国際大学GLOCOM 主任研究員/地域SNS研究会)

 地域情報化において新しいデジタルツールをどうビジネスに結びつけていくかという主旨の基、プレゼンテーションとコーディネーターを加えたパネルディスカッションが行われた。

 Twitterや動画中継(ustreamやニコニコ生放送、stickamなど)などの新しいツールの活用法と地域SNSの組み合わせのあり方などについて具体的な事例や技術的な視点から、また地域活性化の重要な要素であるビジネスの観点から議論がされた。

 株式会社手嶋屋の手嶋守氏から、自身が開発を行っているOpenPNEというSNSの構築システムについての説明とOpenPNEの今後について展望が語られた。SNSの収益モデルを強化するために、個人決済の仕組みを設けることで、その運営を寄付によって賄うという斬新な切り口で今後の地域SNSのあり方について説明がされた。

 続けて、佐賀新聞社デジタル戦略チームの牛島清豪氏から佐賀新聞社におけるウェブ展開についての説明が行われた。全国に500以上ある地域SNSの中でも佐賀新聞社が運営する「ひびの」は、その参加者が1万人を超え、日本最大の地域SNSである。また、既存メディアが運営する数少ない地域SNSとして、SNSの運営と新聞ビジネスとの関係性が非常に興味深い取り組みであると言える。

 既存の新聞ビジネスにおける販売収入と広告収入に依らない、新たな収益モデルとして地域SNSをどう活用していくのかという難しい問題に対して、これまでの取り組んできた事例を踏まえた報告がされた。最後に、細谷拓真氏からTwitterを活用した地域の活性化に関する事例である「Yokotter」が紹介された。地方自治体や地方の商店街でTwitterの活用例が数多く見られるようになってきたが、その先駆け的な存在である「Yokotter」は名前の通り(よこったー)秋田県横手町を舞台に活動がされている。利用者を急激に伸ばしているTwitterと地域SNSの共存について意見交換も行われた。


[パネリスト]

杉浦裕樹氏(NPO法人横浜コミュニティデザインラボ)
宮島真希子氏(神奈川新聞)
肥田野正輝氏(インフォ・ラウンジLLC)
和崎宏氏(兵庫県立大学/ひょこむ)
坪田哲司氏

[司会]

坪田知己氏(慶應義塾大学大学院 特別研究教授)

 行政の事業として、あるいは行政の助成金を受けて立ちあがった地域SNSが、目標年限を終了して「自立」を試みる事例が増えてきている。この分科会では、横浜市の関連事業であった地域SNS「ハマっち!」が、新たな事業体を形成して事業継承をすることになった事例を取り上げ、地域SNSの持続的な運営や事業継承のあり方が検討された。

 まずNPO法人横浜コミュニティデザインラボの杉浦氏は、ハマっち設立の当時の様子について説明した。それによると、ハマっちは横浜の150周年記念行事の一環として設立され、それまでに有志で研究されていた地域SNSの研究成果が活かされているという。また現在のハマっちのシステムであるOpenSNPが、利用者側で修正し、改良していけるシステムであると判断されたため、採用された経緯について述べた。

 次に、慶應義塾大学大学院の特別研究教授である坪田氏の司会のもと、ハマっちに対するパネリストの想いや、それぞれのパネリストがハマっちに関わりをもつようになるまでの経緯について語られた。

 坪田知己氏は、地域に接しつつもバーチャルの形で、地域に新しい情報ハブを立ち上げたいという想いがあり、それがハマっちへの参加に結びついたという。杉浦氏はこれまで舞台監督、市民活動の現場作り、ヨコハマ経済新聞での活動の経験をしてきた。それらの経験が、地域SNSで活かされると感じたことが、ハマっちに関わるきかっけとなったことを述べた。神奈川新聞の宮島氏は、行政に頼るのではなく、自分達の手で地域を変えていくことに関心を持つ中で、ハマっちにたどり着いた経緯を語った。エンジニアであるインフォ・ラウンジLLCの肥田野氏は、「人のつながり」に対して、技術をどのように活かすのかを考えている時に、ハマっちと出会った経緯を述べた。また今後は新たな事業体である「シンフォシティ」の代表として、ハマっちの事業を引き継ぐと共に、CGMを初めとした様々なメディアを組み合わせを用いて、必要な場所に必要な情報を送れる技術の展開を語った。坪田哲司氏は、子供に誇りを持たせる地域作りを考えており、市民が地域に対して主体的に関わって運営していける方向性を模索してきた。シンフォシティでは、新しい公共経営の姿を追求しながら、地域の発展についていくことを語った。兵庫県立大学/ひょこむの和崎氏は、ハマっちの役割として、地域の将来を開き人材を掘り起こすと同時に、人材を結びつけていく使命があるとし、その発展を念願した。

 最後は、継続的な運営の方法について議論された。杉浦氏は、SNSは決して儲かる話しではないとしながらも、運営に必要な資金の徴収方法として、クリック資金のシステムの確立や、利用者に対する広告サービス、新しい講座の提供、編集・統括された情報を送るメディアとして事業展開の可能性を説明した。引き続いて、肥田野氏は寄付システムについて言及した。そこではいかにして小額を寄付してもらうかが重要になると考えられ、その一つのソリューションとして、パスモ・スイカのようなカードで金を寄付してもらうシステムについて報告した。

 最後に司会の坪田氏は、地域SNSの第一期は終了したとし、これまでの地域SNSを開拓していきながら、さらに前向きに進めるようシステムを開発していくことが述べられた。

分科会1-2:地域SNS研究の最前線

[パネリスト]

鳥海不二夫氏(名古屋大学)
吉田倫子氏(富士通総研)
和崎宏氏(兵庫県立大学/ひょこむ)

[コーディネーター]

原田泉氏(国際社会経済研究所)

 地域SNSについては、さまざまな分野から研究が行われているが、それらを一度に聞く機会は少ない。このセッションでは、三つの異なる分野から最新の研究成果の紹介を通して、地域SNSが多面的に検討された。

 名古屋大学の鳥海不二夫氏から「地域SNSにおける友人関係とその変化」と題し、SNSを人間関係によって分類した4類型についての説明と「アクティブ遷移図」を用いたSNSの盛り上がりの分析結果についての報告が行われた。

「SNSの人間関係の分類」として「あみっぴぃ」「モリオネット」「下北沢ブロイラー」「ラブマツ」を例に挙げ、一般型、スター型、凝集型、分散型の4つに分類し、それぞれの類型についての特徴が説明された。またSNSの盛り上がりを可視化するために「アクティブ遷移図」を用いて、利用者がどのくらいの頻度でアクティブな活動をしているかを分析することで、SNSの運営に役立てられるのではないかとの提案がされた。

 富士通総研の吉田倫子氏からは「海外の地域SNSの動向」と題し、海外と日本における地域SNSの差異について報告が行われた。海外の地域SNS運営者へのインタビュー調査から得られたデータを基に、事例を挙げながら日本の地域SNSとの違いが説明された。海外の事例に関して、参加者の多くからコメントがあった。

 最後に、「ひょこむ」(兵庫県)を運営する和崎宏氏から「地域SNSによる地域情報化に関する研究」と題して、氏が先日執筆した地域SNSに関する博士論文の内容を踏まえ、地域情報化における地域SNSの役割について説明がされた。

[パネリスト]

松尾貴臣氏((株)こころざし音楽工房 代表取締役)
堂本暁子氏(前千葉県知事/西千葉住民)
松山美穂子氏(mihorin企画)
岡田泰子氏(NPO法人子ども劇場千葉県センター理事長)
日下裕佳氏(NPO法人TRYWARP/千葉大学)
関本康二氏(G-CAFE代表/千葉大学)
アライヒロユキ氏

 西千葉には、地域通貨ピーナッツをはじめ、さまざまな活動があり、それを支えるたくさんの人がいて、お互いに顔が見える人々同士が緩やかに連携・関係することで相乗効果が生みだされている。この分科会では、主に地域SNS「あみっぴぃ」が個々の活動に与えた影響について語り合われた。また、「顔が見える=実名がわかる」人のつながり作りとして地元の千葉大学が進めている取組みも紹介された。

 まずmihorin企画の松山氏からは、あみっぴぃに入ったきっかけや、あみっぴぃの特徴である世代間の交流への魅力について語られた。松山氏に続き、堂本元知事からは、初めてあみっぴぃのオフ会に参加した時の印象と、知事としてあみっぴぃ上でメンバーと交流した時の思い出について語られた。

 次に話題は、あみっぴぃが生活に与えた影響に移った。こころざし音楽工房の松尾氏から、あみっぴぃを通して、高知県の人々と知り合ったことがきっかけで高知県の観光大使に任命されるまでの経緯が紹介された。

image038.jpg さらにあみっぴぃの具体的な利活用について語られた。TRYWARPでパソコン教室の講師をしている日下氏とG-CAFE'を運営している関本氏からは、あみっぴぃでの繋がりが自身の日常生活に活力を与えていることや、活動の場を広げるきっかけとなっていることが述べられた。NPO法人子ども劇場千葉県センター理事長の岡田氏からは、あみっぴぃ上での交流が、子育て中の母親の視野を広げる可能性や、地域の活性化に繋がることへの期待が語られた。アライ氏からは、自身が運営している会社の文化活動を通し、あみっぴぃが活動の大きな助力となることが紹介された。



特別講演:
実名登録による 人的ネットワークの構築に向けて

-千葉大学校友会SNS「Curio」の取組み-

大塚成男氏(千葉大学 教授)

 私は実名登録による人的ネットワーク「Curio」の構築に向けた話をしたい。離れ離 れになった千葉大生を繋げるにはどうすればよいか。千葉大学には同窓会の連合体で ある千葉大学校友会があるが、個人情報の保護により同窓会名簿の作成が困難となっ ている。では個人情報を保護しながら、どのようにして結びつきを作っていくのか。 そこで注目したのがSNSである。

 SNSには地理的な制約を受けないという、インターネットの利点がある。これまで千 葉大学には学部単位などの小さなグループは多く存在した。その一方でグループに 入っていない人もいた。Curioではそれらを統合させようとした。2007年1月に開始し たCurioは、現在2000人程度が入っている。基本的には大学とCurioは結びついていな い。

 Curioではみな実名を義務づけている。その実名登録や変更は事務側で行うことに なっており、会員自身は直接操作できないようになっている。結婚しても大学の時の 名前を公表させるようにしている。Curioで実名登録が徹底されているのは、それが 同窓会名簿の役割があり、実名を出していないと意味をなさないと考えられているた めである。

 実名を公開する仕組みには、賛否両論があった。実名への反対意見には、悪用される 危険性に対する反応があった。また、基本的にインターネットは「匿名である」とい う思い込みがあった。そのような価値観の違いが、賛否を起こしていた。実名を検討 していく中でCurioの制作の趣旨である「同窓会」にたどり着き、実名は同窓会名簿 で名前を出すのと同じ感覚であるという結論に達した。

 実名が成り立っている背景として、年配には匿名性自体に慣れていない人が多いとい うことも挙げられる。しかし実名を出す以上、個人情報の保護は大切である。その措 置として二つ考えられた。一つは、ウェブ上では会員登録はできないようにしている ことである。事務が卒業生であることを判断・確認した後に、登録が出来るように なっている。もう一つは、日常的にモニター活動をしていることである。不適切な行 為を監視することで、個人情報を保護している。

 実名登録が継続できる理由には二つある。一つは、Curioが人的ネットワークの再構 築であるということである。「見知らぬ人」との交流を重視していない。つまり実社 会での人的交流の延長とみている。もう一つは、Curioが同窓会名簿であり、同窓会 を意識してフォーマルなものになっていることである。つまり「遊び」という要素を 重視していない。毎日見てもらうようには考えていない。ある意味堅苦しいSNSであ るといえる。仮想的関係ではない「他の誰かになれる」などという要素がない。これ らによって、実名登録を維持できているといえる。

講演2:地域SNSの現状と発展の方向性

庄司昌彦氏(国際大学GLOCOM 主任研究員/地域SNS研究会)

 地域SNSを研究し始めて、様々なSNSに登録することにしていた。しかしあみっぴぃに登録するには、実際に出会った人でないと参加できないということを知った。そこで実際に「出会う」ために、千葉まで虎岩さんを伺ったと思い出がある。私は2006年から一貫して、国際大学の「地域SNS研究会」で地域SNSを調査・研究してきた。今回の講演では、全国的な地域SNSの発展をみていきたい。

 地域SNSの始まりは「ごろっとやっちろ」である。「ごろっとやっちろ」のコンセプトは「交流の場+広報」であり、一般の人が見ている場所で、市が交流の場を提供するというのは、当時では斬新なアイディアであった。OpenPNEの登場に従って、各地のSNSの誕生が加速化された。現在地域SNSは立ち枯れの現象も見受けられるが、総数はまだ伸びてはいる。


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 様々なデータを見てみると、地域の繋がりは減少し、人口も減少しているが、逆に高齢化は進んでいるという現状があることが分かる。このような姿では「高齢者たちがさびしく暮らす社会が進む」と思われる。よって人と人を結ぶための、協働・中間集団の活性化が必要である。その際、新しいメディアの利用は、人と人の関係を豊かにできるのだろうか。インターネットはただ眺めているだけではなく、コミュニケーションをしている。そのようなコミュニケーションが人間関係を豊かにする一方で、人間関係の豊かさに格差を起こしているともいえる。

 SNSを考える上で、社会関係資本の概念である「結束」と「橋渡し」が大切である。地域SNSは内部で結束を強めると同時に、外部からの新しい関係を結ぶことができる。その両者のバランスは地域の状況や目的などによって異なると思われる。地域SNSによる活性化のモデルは、「つながりを深める」また「つながりを作る」というものであると考えられる。


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地域SNSは大きく「広さ」と「人間関係」に分類される。ここでは類型1、類型3、類型5をみていきたい。類型1とは「情報重視で広い」である。
 例えば、地方の新聞社が運営している地域SNSなどである。この地域SNSでは、新聞とネットが連携しあって情報を流通しながらコミュニケーションをとっている。類型3は類型1とは逆で「人間関係重視で狭い」である。これはリアルにおける人間関係を加速する利用の仕方をしている。例えば、「あみっぴぃ」や「らぶまつ」がこれにあたる。類型5の「中間」は、情報と交流が中間的な位置にあることを指している。例えば「マイタウンSNS」「ハマっち」がこれに当てはまる。


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image036.jpg 最後に今後の地域SNSの問題点として、ネット上での充実感をどのように持続させるのかということが挙げられる。ITで出来ることはほんの一部であり、ITを使って現実の生活をどのように豊かにできるかを考えることが大切であると思う。

虎岩雅明氏(NPO法人TRYWARP代表理事/あみっぴぃ)

 私の活動の原点は、「まちのこんにちは」である。SNSの立ち上げの時には地域の活性化を目指していたのに、アクセス数などSNSの活性化にシフトしてしまうことがある。これはもったいないことだと思う。私は、SNSが地域の活性化に繋がることを考えてきた。今回の講演では「あみっぴぃが誕生するまで」を語らせて頂きたい。

 私は起業をしようとしていた当初から、地域に貢献することを目指していた。自分自身で会社を作ることが出来るのかもしれないと思ったのは、ビルゲイツのドキュメントを観て、アイディアが他人の生活に影響を与えるという事実に感動したことがきっかけであった。その時に自分で会社を作るという考えに目覚めた。様々な企業家のアドバイスを聴いた後、「自分の選んだ道を正解に変える人生にする」という考えに達し、企業することを決意した。

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 大学卒業後は、まず社会人として生かしてもらえるようになりたいと思い、起業のために今自分が出来ることをお金に変えようと考えていた。そのような中、家電量販店でアルバイトをしていたとき、意外なことに「クリック」の意味が良く分からないという人達が多くいることを知った。その経験を通して、学生が「クリック」を教える収益モデルを考えた。しかしパソコン教室をするのではなく、大学生と年配が地域で交流することを指向した。そこで大学生を集めるために、千葉大学でビラを2000枚配った。その結果、10人のスタッフを募ることができた。

 起業に際して資金面に問題があったのだが、事務所は活動に賛同してくださった地域の方が無料で提供してくれた。この事を通して「地域に恩返しをする」と再び決意をした。恩返しをすると人が集まった。人の集まりが、さらに事業を活性化した。

 TRYWARPの事業内容は大学生がパソコンを教えることを通して、若者と地域住民との世代間交流のきっかけを作ることである。またそのコミュニケーションを通して、パソコンのトラブルを解消すると共に、地域の方に「安心」を提供することである。しかし若者には、雑談のようなコミュニケーションの面白さがありながら、卒業後のネットワーク作りや、自分が書いた日記が見られるようなシステムの提供が大切であると感じた。そこからあみっぴぃが誕生した。あみっぴぃの名前の由来は「アミーゴ+ピーナッツ」である。新聞に載ったことで、各地域からの問い合わせがあり、そこから制作事業も始まった。

 私はあみっぴぃを、幅広い層のユーザーに使ってもらいたかった。しかし大学生の参加を禁止した。大学生ばかりでは、年配の方がおっくうになるからである。地域では若者が年配に適合しようと歩み寄るのが当たり前だと思っている。ネットでも同じようにしたいという考えがあった。また健全なコミュニティ作りのために、ネット用語や実在しないコミュニティの作成を禁止し、本名と顔写真の記載を徹底した。コメントをする時に顔写真を出させるようにし、よりリアルに近い空間を作った。さらにデザインにおいても、あみっぴぃの仕組みを「教える側」の人が、最小限で教えられるものにし、年配の方が分かりやすいような工夫をした。

 あみっぴぃは「出会い系」ではなく「出会った系」という形を目指している。つまりインターネットで情報を出し合うことで、リアルで出会った時のサポートとなるような形だ。情報共有をするようなサイトは多くあるが、あみっぴぃでは「気持ちの共有」を重視している。それがリアルで再会したときに話しの種となり、さらに気持ちの共有を起こすことになる。

 最後に一つ言いたいのは、地域SNSが地域を盛り上げるわけではない、ということである。携帯電話を持つのは、友達がいるからこそ活きるのであり、ただ持っているだけで友達が出来るわけがない。それと同じように、活性化している地域がSNSを使うことが大切である。するとリアルが活性化する。SNSには「発信型」「積極的受信型」「消極的受信型」の3つがあるが、これからは「発信型」「積極的受信型」での書き込み情報を見ている「消極的受信型」の人たちのことを考えた経営を目指していく。

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開会式

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松尾貴臣氏((株)こころざし音楽工房 代表取締役)

 千葉大学出身で、歌を歌うことを通じて地域社会の活性化に関わっている松尾氏が地元住民を代表してオリジナルソング「歓迎の歌」を熱唱し、歓迎の意を表した。

後閑博史氏(NEC C&C財団専務理事)

 開催関係者に感謝を申し上げる。NEC C&C財団の活動を紹介し、情報技術による社会生活のあり方、また地域の活性化についての調査研究成果を、財団のホームページで発信していると述べた。

斉藤康氏(千葉大学 学長)

「人間はただ集団を作るというだけではいけない。技術の進歩だけではなく、それを使ったコミュニケーション作りが大切であると思う。ぜひこのフォーラムでは、それを目的に頑張ってもらいたい。地域で仲良く楽しく過ごしていけるように、また今回のフォーラムがその機会となるように祈る次第である」


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熊谷俊人氏(千葉市 市長)

「私はあみっぴぃのユーザーである。あみっぴぃがmixiと違うところは、顔をあわせることを前提としているところではないだろうか。Face to Faceにおける人間関係を豊かにしているところが違う。ICTとはITに「コミュニケーション」という言葉が入る。このようにITは最終的にコミュニケーションを活性化するためにあると思う。

 行政は昔からの繋がりを大切にしていた。しかしそれは変わりつつある。これからは、地縁や血縁などを超えた、趣味などで繋がれる時代になる。こうした新たな関係をどのように公共のものにするか、また公共の位置においてこの関係をどのように扱っていくのかが今後大切になる。そうした中で行政として新しい試みが出来るのではないだろうか。例えばSNSでは、市民とのランチミーティングやタウンミーティングをすることができる。そうして出来たアイディアを市で採用しても良いと思う。このような交流はmixiではできない。今後、千葉市としては、情報を専門とする部署を作る予定である」