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分科会1-1:地域通貨と地域SNSから広がった新たなつながり-西千葉の事例から

[パネリスト]

松尾貴臣氏((株)こころざし音楽工房 代表取締役)
堂本暁子氏(前千葉県知事/西千葉住民)
松山美穂子氏(mihorin企画)
岡田泰子氏(NPO法人子ども劇場千葉県センター理事長)
日下裕佳氏(NPO法人TRYWARP/千葉大学)
関本康二氏(G-CAFE代表/千葉大学)
アライヒロユキ氏

 西千葉には、地域通貨ピーナッツをはじめ、さまざまな活動があり、それを支えるたくさんの人がいて、お互いに顔が見える人々同士が緩やかに連携・関係することで相乗効果が生みだされている。この分科会では、主に地域SNS「あみっぴぃ」が個々の活動に与えた影響について語り合われた。また、「顔が見える=実名がわかる」人のつながり作りとして地元の千葉大学が進めている取組みも紹介された。

 まずmihorin企画の松山氏からは、あみっぴぃに入ったきっかけや、あみっぴぃの特徴である世代間の交流への魅力について語られた。松山氏に続き、堂本元知事からは、初めてあみっぴぃのオフ会に参加した時の印象と、知事としてあみっぴぃ上でメンバーと交流した時の思い出について語られた。

 次に話題は、あみっぴぃが生活に与えた影響に移った。こころざし音楽工房の松尾氏から、あみっぴぃを通して、高知県の人々と知り合ったことがきっかけで高知県の観光大使に任命されるまでの経緯が紹介された。

image038.jpg さらにあみっぴぃの具体的な利活用について語られた。TRYWARPでパソコン教室の講師をしている日下氏とG-CAFE'を運営している関本氏からは、あみっぴぃでの繋がりが自身の日常生活に活力を与えていることや、活動の場を広げるきっかけとなっていることが述べられた。NPO法人子ども劇場千葉県センター理事長の岡田氏からは、あみっぴぃ上での交流が、子育て中の母親の視野を広げる可能性や、地域の活性化に繋がることへの期待が語られた。アライ氏からは、自身が運営している会社の文化活動を通し、あみっぴぃが活動の大きな助力となることが紹介された。



特別講演:
実名登録による 人的ネットワークの構築に向けて

-千葉大学校友会SNS「Curio」の取組み-

大塚成男氏(千葉大学 教授)

 私は実名登録による人的ネットワーク「Curio」の構築に向けた話をしたい。離れ離 れになった千葉大生を繋げるにはどうすればよいか。千葉大学には同窓会の連合体で ある千葉大学校友会があるが、個人情報の保護により同窓会名簿の作成が困難となっ ている。では個人情報を保護しながら、どのようにして結びつきを作っていくのか。 そこで注目したのがSNSである。

 SNSには地理的な制約を受けないという、インターネットの利点がある。これまで千 葉大学には学部単位などの小さなグループは多く存在した。その一方でグループに 入っていない人もいた。Curioではそれらを統合させようとした。2007年1月に開始し たCurioは、現在2000人程度が入っている。基本的には大学とCurioは結びついていな い。

 Curioではみな実名を義務づけている。その実名登録や変更は事務側で行うことに なっており、会員自身は直接操作できないようになっている。結婚しても大学の時の 名前を公表させるようにしている。Curioで実名登録が徹底されているのは、それが 同窓会名簿の役割があり、実名を出していないと意味をなさないと考えられているた めである。

 実名を公開する仕組みには、賛否両論があった。実名への反対意見には、悪用される 危険性に対する反応があった。また、基本的にインターネットは「匿名である」とい う思い込みがあった。そのような価値観の違いが、賛否を起こしていた。実名を検討 していく中でCurioの制作の趣旨である「同窓会」にたどり着き、実名は同窓会名簿 で名前を出すのと同じ感覚であるという結論に達した。

 実名が成り立っている背景として、年配には匿名性自体に慣れていない人が多いとい うことも挙げられる。しかし実名を出す以上、個人情報の保護は大切である。その措 置として二つ考えられた。一つは、ウェブ上では会員登録はできないようにしている ことである。事務が卒業生であることを判断・確認した後に、登録が出来るように なっている。もう一つは、日常的にモニター活動をしていることである。不適切な行 為を監視することで、個人情報を保護している。

 実名登録が継続できる理由には二つある。一つは、Curioが人的ネットワークの再構 築であるということである。「見知らぬ人」との交流を重視していない。つまり実社 会での人的交流の延長とみている。もう一つは、Curioが同窓会名簿であり、同窓会 を意識してフォーマルなものになっていることである。つまり「遊び」という要素を 重視していない。毎日見てもらうようには考えていない。ある意味堅苦しいSNSであ るといえる。仮想的関係ではない「他の誰かになれる」などという要素がない。これ らによって、実名登録を維持できているといえる。